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2019年2月28日

森上教育研究所 公立中高一貫 特任研究員  若泉 敏

2019年度(平成31)都立両国中検査問題の傾向と対策

両国は、2019年度から適性検査ⅠとⅡを共同作成問題で、Ⅲを独自問題で出題。

適性検査Ⅰは、【文章の内容を的確に読み取ったり、自分の考えを論理的かつ適切に表現したりする力をみる】問題で、文章要約などの読解問題と、自分の考えを書く作文を構成要素とする。上記二重下線部は、昨年までの[出題の方針]に挿入する形で密やかに加えており、「論理的」に表現する力を採点評価することを明確に示している。「論理的」表現力がこれまで以上に求められることに注意したい。


適性検査Ⅰ

検査Ⅰで共同作成問題を採用した学校は、2019年度から両国附属中学校が参入し、小石川、武蔵、大泉、富士の計5校となった。

2018年度までの両国独自問題では読解問題を3~4題と多めに出題し、他の一貫校と一線を画していた。そのかわり作文は文字数を350~400字に抑えていた。また課題文が2つ出されてあっても「2つの文章を関連づけて考えを書く」ことまでは要求されないことが多かった。言語活動を重視し「考える国語」を実践課題とする都立両国の読解問題重視の傾向は、共同作成問題(小石川型検査Ⅰ)から距離を置いた独自路線であったが、今年度からは一転して共同作成問題が「本校の入学者選抜資料としてより適切なものとして採用する」(学校幹部談)こととなった。

一方、独自問題作成校(他の5校)の検査Ⅰが共同作成問題(小石川型)の形式に近似してきていることから、将来は共同作成に統一される可能性がある。例えば、2018年度から適性検査Ⅲを出題するようになった白鷗附属中学校の、2019年度検査Ⅰは、異なる作者の2つの文章を資料AとBで読ませ、読解が2題、資料AとBの内容をふまえて自分の考えを書く作文が400~450字で1題と、形式・内容ともに共同作成問題とそっくりである。

さて、2015年度から共同作成になった検査Ⅰは今年で5年目だが、出題形式と出題のねらいは、これまでの傾向を概ね踏襲している。一般的に言えば形式面では、異なる場面・状況を取り上げて書いた二人の筆者のそれぞれの文章を題材とし、内容面では、2つの文章に共通する見方や異なる考え方を読み取らせ、それをふまえた上で「あなたの考え」を書かせるという特徴を持つ。東京都では当たり前のように出題されるが全国的には実はまれである。なお、両国志望者は今後の過去問練習を小石川と武蔵の検査Ⅰにシフトする必要がある。

2019年度【文章1】は、絵本作家 かこさとしさんの対談の記録「科学の本のつくりかた」(約3,500字)、【文章2】は、かこさとしさんの「地球」に関する解説文(約900字)を課題文とする。


今年度の特徴は、

(1)2つの文章の合計文字数は4,400字、2006年の開設以来最大字数であるが対話文なので読みやすい。課題文として対談記録文の採用は初めてである。


(2)同一人物の考えを述べた文章を異なる表現形式(対話文と解説文)で課題文とする。これは小石川・武蔵の独自問題時代を含め、初めてである。


(3)昨年まで〔問1~問3〕で表示されていたのが、他の独自問題作成校にそろえて〔問題1~問題3〕と表示するようになった。


(4)仮に【文章1】を具体的内容、【文章2】を抽象的内容とすると、今年度の読解〔問題1〕、〔問題2〕では、二つの文章を照らし合わせて「具体と抽象を行き来させる」点が例年とは異なっており、注目すべき興味深い出題となっている。


(5)〔問題3〕の作文の文字数は400~440字で2015年以来同一である。段落構成は第三段落まで、それぞれに書く内容が指定されている。一昨年の「第二・第三段落を自分で構成を考える」形でなくなった分、書き易くなっている。しかし今年度は「自分の考えを記述する」問題ではない。【文章1】と【文章2】を読んだ後にひかるさんと友達が感想を述べた会話文(約240字)を読ませ、第1段落で、①「友達の発言の中で誤解をしていると思われる点を指摘」し、第2段落で、②友達が誤解している(とひかるさんが判断した)点について【文章1】と【文章2】にもとづいて(根拠を示して)説明する。第3段落で、①と➁をふまえ「ひかるさんがこれから本を読むときに心がけようと思っている点」を「ひかるさんが示したと思われる考え」で記述するよう指示している。


ひかるさんの考えを自分の中に取り入れて考える、言わば「第三者の視点」を取り入れた科学的客観的な読解と記述を要求し構成している点、大学入学者共通テストの記述問題をも視野に入れた意欲的な出題として評価したい。


適性検査Ⅱ

適性検査Ⅱは、【資料から情報を読み取り、課題に対して思考・判断する力、論理的に考察・処理する力、的確に表現する力などをみる】問題で[大問1]が算数、[大問2]が社会、[大問3]が理科を主題材にする。小問はそれぞれ3題ずつで変わらない。ページ数は共同作成初年度2015年の12ページから増加し続けており、今年は18ページで昨年の16ページから2ページ増加した。

検査Ⅱで大問3つすべてを共同作成問題で採用した学校は両国、白鷗、立川国際、南多摩、大泉、富士の6校である。桜修館と三鷹は大問1(算数)を、小石川と武蔵は大問2(社会総合)をそれぞれ独自問題で出題した。

2019年度の検査Ⅱ[大問1]は、お楽しみ会のしおりの作成を題材とする。平面と立体で、図形の性質や規則性に関する理解力と、論理的に考察・処理する力をみる問題。

〔問題1〕は、1枚の紙で左とじのしおりを作って付けた表紙とページ番号を、折りたたむ前の展開した紙に記入する問題で、立体図と平面図の関係把握力をみる。〔問題2〕は、約束などに基づき、模様を表現する漢字と数字の合計個数を少なくする場合とその理由を考える問題で、抽象的な記号と数の意味を理解し約束に従って素直に置き換えができるか、数学を学んでゆく基本的資質・態度を問う。

〔問題3〕は、磁石つきの物体を鉄製の立方体上を指定された場所に移動する経路選択の問題。5種類の動かし方を選択して試行錯誤させるところは、物体を自走ロボットに置き換えればプログラミングの問題にもなる。時間があれば楽しみながら取り組むことができる問題。

[大問2]は社会総合問題で、訪日外国人旅行者を題材に複数の資料から読み取った情報を関連づけて考察する。昨年あった直線定規の使用を条件としたグラフ作成の問題は、今年は出題されなかった。

〔問題1〕は、急増する外国人入国者数と変化の少ない日本人出国者数を、2つの異なる観点から比較し、特徴を書き割合を求める。割合の基準量を判断する文は小石川検査Ⅱ社会の問題より簡単な表現である。グラフを読み取りおおよその数で計算し整数倍で答える。

〔問題2〕は外国人旅行者の延べ宿泊者数が大幅に増加した地域を選び、課題解決のために取り組んだ内容等の資料から、大幅増加の理由を考える。

〔問題3〕は案内マップ等で使用される案内用図記号(ピクトグラム)の役割を2つ考える問題。

[大問3]は理科で、和紙などの紙と糊を題材にして比較実験をする問題。

〔問題1〕は、水の吸い方について、紙の面積(㎠)または紙の重さ(g)のどちらかを選び、紙が吸った水の重さ(g)を求めて同じ面積当たりまたは同じ重さ当たりの大きさで比較する。必ずしも1㎠または1gあたりの単位量で比べる必要はない。昨年は1㎠あたりの花粉の数を求め、求め方も説明する問題だったが今年は求め方の説明はなかった。今年度の問題を使ってする過去問練習の際は「求め方の説明」もさせておいた方がよい。

〔問題2〕は、写真を見て紙の繊維の向きを答え、そのように答えた根拠を2つの実験結果にふれて説明する問題。実験結果からは「プリント用の紙」を選んで説明する方が説明しやすいが、解答例は「新聞紙」を取り上げている。なお、一方の実験結果では判断できないことを指摘した上で、もう一方の結果から判断する場合の表現の仕方を示しているので今後の比較実験考察問題解答の参考にするとよい。

〔問題3〕は、糊を作るために加える水の重さを調べる実験で、3回目までの結果と4回目に行う試みの予想をふまえ5回目の実験計画を考える。そしてそのように考える計画が、課題解決に最適となる理由を説明する。検査Ⅱの最後の問題は、科学的実証的に考察する力をみる手強い問題となった。

検査問題Ⅱは例年同様、全体として無理のない「適性検査らしい問題」である。都立共同作成問題は他の道府県に比べ、問いの文の読み取りが難しいのが例年の特徴である。しかし今年は昨年に続きそれほど難しいものではなかった。

両国は、2019年度から独自問題は検査Ⅲだけとなった。


適性検査Ⅲ

検査Ⅲは、大問2題、小問5題で、検査時間は30分。算数と理科の力を検査する。検査Ⅲを出題するようになった2015年から問題数の変化はない。2017年までの3年間は10ページ構成で問題文の読み取りに厳しいところがあったが、2018年からは6ページに減少。昨年は問題がやさしめになったが今年は同じページ数ながら難化した。

[大問1]は、両国高校附属中学校の文化祭でクラブの展示場面を設定して作問。

〔問題1〕は、5枚入りと7枚入りの2種類で売られているクッキーを買う場合に2種類の組み合わせで買うことができない枚数をすべて答える問題。当然5の倍数と7の倍数は買えるので、ここは「買うことができない」枚数を調べるのではなく、逆に「買うことができる」枚数を書き出してから残余を求め解答するのがよい。

問題用紙の空きスペースを使って書き出すのだが、ひと工夫する余地がある。例えば、5の倍数を数文字ぶん間を空けて書き、次に7の倍数を5の倍数のそれぞれの間に一段下に置いていく。それから5と7の和で買える枚数をもう一段下に置いて、落ちや重なりがないように整理して書く。このような余白部分の使い方も実践向きの練習として大事であろう。

〔問題2〕は、生き物の外来種が日本に入ってきた理由として、共通して言える点は何が考えられるか答える問題。会話文に「オオカナダモ、アライグマ、ウシガエル、ニンジン・ナス・ジャガイモ等の野菜、シロツメクサ」が「日本に生息していなかった生き物、つまり外来種」として入ってきた理由とともに例示してある。

本問出題のねらいは【社会への関心の程度、物事の本質を見抜く力をみる】のだそうだ。思うに、本問に関わる「社会への関心」とは、国連サミット採択のSDGs(持続可能な開発目標)17のゴールを視野において、種の保存・生物多様性と環境問題等への関心を、単に「地球上からいなくなるのは悲しい」という情緒的心情にとどまることなく、人間というただ一つの種の活動によって、多様な種の存在の危機が短期間に起こっている本質を直視する態度である。この本質を踏まえて解答を「考え」れば、(外来種の共通点は)《人間の活動によって日本に入ってきた生物である》となろう。例えば《日本にもともといなくて外国から入ってきた生物》とする解答は、すでに会話文に書いてある外来種の説明を子どもらしく言いかえたに過ぎないことになるし、《人間が楽しみや役に立てる目的で海外から日本に持ち込んだ生物》と解答すると、会話文にある(人間が意図的に持ち込んだのではない)「シロツメクサのように、外国からの荷物にまぎれこんで日本に入ってきた植物もある」ことの共通性に欠けた解答になる。

本問のようなシンプルな問いかけであっても、何を書くべきか問いの文の分析が必要であり、例示された説明を踏まえて自ら考えて解答しなければいけない。

〔問題3〕は難問であった。しかし、決して私立中学受験の技能やテクニックを使う問題ではない。

長方形の教室に置いた4つの展示台に、更に2台を追加して、台から1m離れて引かれているラインまでの立ち入り禁止部分の面積の合計が、22.28㎡になるように、追加した2台の位置を解答欄に黒で記入するという問題である。解答欄の図の中央付近に田の字型に4個の台が置いてある。図には縦横1mごとに立ち入り禁止の目印となるラインが引いてあり、1マスの正方形が展示台1個分の大きさ。すでに置いてある4個の台の立ち入り禁止部分面積を求めると11.14㎡になる。合計の面積からこの面積を引くと11.14㎡。この広さは8㎡+3.14㎡と分けられるので、新たな立ち入り禁止部分は正方形8マスと半径1mで中心角が90度の扇形4個分となる。ところがこの見立てでは展示台を様々に置いてみてもうまく当てはめることができない。

時間を費やして[大問2]に進めなかった受験生も相当出たに違いない。実は1マスの正方形の部分が、90度の扇形の部分と、正方形からその扇形を取り除いた部分とに分割できることに気がつけば解答の道が開けてくる。つまり、すでに置かれた台の立ち入り禁止部分と、更に置いた新しい台の立ち入り禁止部分に重なる部分があったのである。中心角90度の扇形と正方形の分割は5年生の教科書で当然に扱う。

[大問2]は、暗証番号を題材にした整数の性質ときまりに関する問題。

〔問題1〕は4桁の暗証番号を8桁または9桁の数にして記録できる【記録の仕方】をもとに、今度はAさんが9桁の数を逆に計算して4ケタの暗証番号を求めた式と計算結果を、Bさんが見て、4桁の数が正しい元の4桁の暗証番号ではないとすぐに気がついた理由を答え、更に9桁の記録する数から正しい元の暗証番号を求める問題。提示された計算式と結果は、途中の計算ミスを生じたものではない。【記録の仕方】は4桁の暗証番号が偶数か奇数か、また奇数の場合は3の倍数かまたは3の倍数でないかの3通りで、それぞれかける数が2段階で異なっている。Aさんが行った式計算のどこがおかしいのかを【記録の仕方】の手順と照らし合わせて分析し、Bさんがすぐに気がついた理由を記述する。

課題のプロセス(過程)と結果を全て受検者に提示した上で、逆算思考で論理的に考察して判断させる点で、適性検査に典型的な出題である。なお、かける数は(2,3,5)のどれかであるので、一桁の数をかける計算はわざわざ筆算しなくても出せるように日頃から練習しておきたい。計算処理のスピードに関わるのでおろそかにしてもらいたくない。

〔問題2〕は、記録する数が7桁目より上の位の数字が96から100までで6桁目から1桁目までは0が続く数である場合の、元の4桁の暗証番号を一つ考える問題。問題はあっさり書いてあるが算数のセンスが問われそう。手がかりは〔問題1〕で行った計算である。〔問題1〕の9桁の数は116788320と書いてあるので、そこから自分で計算した正しい暗証番号は1782と出るはずである。7桁より上の数字は116であるから予想される暗証番号を考えて試行錯誤することになる。ここでも数字の似ていること、数字の共通性に着目する注意力が問われている。

総じて両国の算数の問題は一見すると難問に見え、解くすべがないように感じることもあるだろうが、実は作問上の工夫がみられるのである。例年、解答する際の条件や手がかりが、会話文や資料や問いの文章のところどころに散らばっているので、慎重に気を配って根気強く作業をする態度が必要である。


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若泉 敏
スクールETC代表、森上教育研究所 公立中高一貫校特任研究員
福井県生まれ。私立学校教諭、中学受験専門大手進学塾講師を経て、82 年に「スクール ETC」を開塾。
OECD(経済協力開発機構)の PISA(生徒の学習到達度調査)と公立中高一貫校適性検査問題の関連性を初めて指摘。全国の公立一貫校適性検査問題を類型別に分類し、各メディアから注目を集める。適性検査問題分析の 第1人者として、講演や取材多数。

全国の公立中高一貫教育校と教育委員会を精力的に訪問取材しており、検査問題の分析を通して、公立中高一 貫校の運営や教育行政に改革提言も。
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