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2017年2月20日

森上教育研究所 公立中高一貫 特任研究員  若泉 敏


2017年度(平成29)都立両国中検査問題の傾向と対策

両国は、適性検査Ⅰと適性検査Ⅲを独自問題で出題。適性検査Ⅱは共同作成問題。


適性検査Ⅰ

適性検査Ⅰは【文章を読み取る力や、自分の意見を文章で分かりやすく表現する力をみる】問題で、文章要約などの読解問題と自分の考えを書く作文を構成要素にしている。

2017年度検査Ⅰは、瀧本哲史 著「ミライの授業」(約1900字)と、斉藤淳 著「10歳から身につく問い、考え、表現する力 ぼくがイェール大で学び、教えたいこと」(約1000字)。

2つの文章を題材とする点で共同作成問題と同じ構成だが、読解は問題5問中に4問あり、他の都立校の通常2問に比べ多いのが特徴で国語読解力を重視していることがわかる。また、問いの文の形式は私立中入試でもよくみられる形で出題しており「文章の言葉を使って」まとめたり「文章の中から具体的な事柄を挙げて」説明したり「文章中の言葉を15字以内で抜き出す」問題である。

〔問題5〕の課題作文は、『馬車』を比ゆ的に取り上げ、「いまの日本」にはどのような『馬車』があると考えるか、その『馬車』の問題を解決するにはどうすればいいか、考えを書く。本文で筆者が述べている「課題解決」や「課題発見」という言葉の意味をふまえて350~400字で記述する。作文の字数は、共同作成問題よりも50字程度少ない。

今日の企業が若手社員たちに求める「課題発見と課題解決の能力」に受検生がどう迫るかを探る意欲的な出題であった。


適性検査Ⅱ

適性検査Ⅱは【資料から情報を読み取り、課題に対して思考・判断する力、論理的に考察・処理する力、的確に表現する力をみる】問題で、大問3問、小問9問で構成。

検査Ⅱ[大問1]は、立体図形と平面図形に関する問題。

〔問題1〕は、棒を2本つなげたものを支柱にして作った立方体で、結節点を結ぶ正三角形を見つける問題。私立中受験の一般的な立方体の切断面の問題とは違う。

〔問題2〕は、整数の特色と線対称をからめて考案した問題で、2色の正三角形を敷きつめた模様についてできあがった模様Aと模様Bの違いを説明する。良問である。

〔問題3〕は、2量の関係を表す式と図形の規則性を融合した問題で、問いの「読み取り」および言葉を使っての「説明」は、必ずしも簡単とは言えない。会話文と表から規則性を見つけるが、説明することはあくまでも「2数の関係」であって、「一方の数の求め方」を説明するのではないので注意が必要。

[大問2]は、家庭菜園と野菜の生産に関して理科と社会に算数の計算を絡めた総合問題。資料や会話に根拠をふまえつつ学習や体験してきたことを総動員して説明する。

〔問題1〕は、野菜栽培の工夫としてわらを敷く効用や理由を考える問題。グラフの下段に「8月9日に観測」とあることにも注意したい。

〔問題2〕は、資料の表から野菜の一部の生産量の差と、生産額の多い3県の割合の合計を求め、その値からの野菜分布の特色を説明する。計算する数字のどれを選択するかで違いが出るので判断力の差が出そう。

〔問題3〕は、東京大田市場に入荷する産地の特色について、促成栽培、露地栽培、近郊農業、地図上の位置など社会科の基礎知識も踏まえて判断し説明する。知識活用問題としてよくできている。

[大問3]は、時間を計る実験に基づく理科の説明問題。

〔問題1〕と〔問題2〕は、教科書で学習した知識や自らの体験をもとにして考え説明する知識活用型の問題。

〔問題3〕は、球100gが落ちるのにかかる時間に「影響する条件」と「影響しない条件」を、条件A~Cから1つずつ選び、それぞれの条件を選んだ理由を、実験ア~クのうち2つを比べて説明する問題。論理的で緻密な考察が求められる。実験1の条件と図2から読み取れる容器の深さをふまえて条件A~C、実験ア~クを選択しなければならない。また、実験ア~クから選ぶ2つの実験は対照実験となる。簡単に対照実験と考えると12通りあるが、最も適する実験を選ぶところに、科学的な思考力、判断力が問われている。

全体として検査問題Ⅱは昨年と同様、「適性検査らしい問題」となっている。都立共同作成問題は、他の道府県に比べ、問いの文の読み取りが難しいのが特徴である。従って、やみくもに全国の問題を多く解かせて慣れさせるトレーニングは必ずしも効果のある指導とは言えない。俯瞰して捉える鳥の目(全体傾向の把握や要点・要旨の把握)と細部の表現(ちょっとした言葉の使い分けや資料の変化や違いなど)にこだわる虫の目の両方の力をじっくり育成しなければならない。

適性検査Ⅲ

検査Ⅲは、【課題に対して科学的・数理的な分析を行い、総合的に考察し判断・解決す

る力をみる】問題で、両国は大問が2題、検査時間は30分。全問算数の力を問う。

2017年度は、昨年に引き続き厳しい問題。

[大問1]は、ドント方式で議席の配分を考える問題。

〔問題2〕では、獲得した議席数から逆に得票数を考えさせる。

〔問題3〕は、会話から複雑な情報を如何に整理するか、論理的思考力と情報処理力を厳しく求める良問。

[大問2]は、途中で速さを変える設定で〔問題1〕は模式図で2通りの走った距離の差を求め、〔問題2〕は最も短時間で往復する場合の道筋を解答欄の図に書き入れる。定規を用いて作図する。解答する際の条件や手がかりが会話文や資料、問いの文章のそこここに散らばっているので、慎重に根気強く作業をしていくことが求められる。昨年に引き続き問題文の読み取りが厳しい出題。他校が易化ないし私立中受験類似問題を採用する中で、異彩を放つ。


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若泉 敏
スクールETC代表、森上教育研究所 公立中高一貫校特任研究員
福井県生まれ。私立学校教諭、中学受験専門大手進学塾講師を経て、82 年に「スクール ETC」を開塾。
OECD(経済協力開発機構)の PISA(生徒の学習到達度調査)と公立中高一貫校適性検査問題の関連性を初めて指摘。全国の公立一貫校適性検査問題を類型別に分類し、各メディアから注目を集める。適性検査問題分析の 第1人者として、講演や取材多数。

全国の公立中高一貫教育校と教育委員会を精力的に訪問取材しており、検査問題の分析を通して、公立中高一 貫校の運営や教育行政に改革提言も。
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