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適性検査問題を評価する

2018年2月19日

森上教育研究所 公立中高一貫 特任研究員  若泉 敏


武蔵は、適性検査Ⅱ[大問2]、適性検査Ⅲを独自問題で出題。他は共同作成問題。

適性検査Ⅰ

検査Ⅰは、【文章の内容を的確に読み取ったり、自分の考えを適切に表現したりする力をみる】問題で、文章要約などの読解問題と自分の考えを書く作文を構成要素にしている。

2018年度検査Ⅰで共同作成問題を採用した学校は、都立武蔵、小石川、大泉、富士の4校。都立中高一貫校が適性検査をすべて独自に作成していた時代(2014年度まで)の小石川・武蔵の出題形式をふまえたものである。形式面では、それぞれ異なる場面・状況を取り上げた二人の筆者の文章を題材とし、内容面では、2つの文章に共通する見方や異なる考え方を読み取らせ、それをふまえた上で「あなたの考え」を書かせるという特徴を持つ。このような課題条件作文は東京都では当たり前のように出題されるが、全国的にはまれである。

本年の課題文章は、【文章1】が、串田孫一 著「考えることについて」(約1,800字)、【文章2】が、出口治明 著「人生を面白くする 本物の教養」(約1,400字)であった。

今年の特徴は、①〔問1〕と〔問2〕の読解問題は、解答の字数制限がなく「文章中の言葉を使って書く」ように指示があるだけである。②〔問3〕の作文の文字数は400~440字で変わらない。③作文の課題は「知識獲得のあり方と探求の姿勢」について、二人の作者のそれぞれの考え方をまとめ(要約)、それぞれの内容に関連付けて自分の考えを書くという問題で、問題によく出される「共通する主題」についての言及はなかった。④段落構成は第一段落から第三段落まで、それぞれ書くべき内容が指定されている。昨年は第二・第三段落の内容を「自分で考えて」構成する形をとっていた。⑤自分の「考え」の対象も「これから学校生活や日常生活の中で、何を大事にし、具体的にどのように行動するのか」という内容で、一般的な作文の形式に近くなり、相当書きやすかったのではないか?

共同作成問題としてつくられるようになって今年で4回目だが、武蔵に関しては後述する検査ⅡやⅢを含めて、受験偏差値の高止まりと裏腹に検査問題自体はかつての難しさから遠ざかりつつある。


適性検査Ⅱ

適性検査Ⅱは、【資料から情報を読み取り、課題に対して思考・判断する力、論理的に考察・処理する力、的確に表現する力などをみる】問題で[大問1]が算数、[大問2]が社会、[大問3]が理科を主題材にする。小問数はそれぞれ3題ずつで変わらない。武蔵は全ページ数が昨年の14ページから16ページとなった。

検査Ⅱ[大問1]は、さいころを使った問題。

〔問題1〕は、立方体の展開図に1~5の目を書くのだが、簡単に考えて間違えた受検生が相当数いたのではないか? 問いの文には「図1のさいころを立方体の展開図から作る」ことと「1から5までの目は図2のさいころの面のスケッチを用いる」ことが条件として挙げられていることから、2と3の目の傾き方と左右どちらの位置にどの目を置くかを判断して記入しなければいけない。

〔問題3〕は、3枚の鏡を張り合わせた中央にさいころを1個置いたときに、見える目の数の合計を求める問題で、変わらない性質に気づけば説明も簡単に書ける。

[大問2](社会総合)は、独自問題で出題。

江戸時代の日本橋とその周辺の様子を描いた図を題材にして、「日本橋」に関する社会科の問題を基調に作問しているが、割合の問題で算数を絡めている。

〔問題2〕は、小問(1)と(2)の問いの文が、「AのBに対する割合を求め、百分率で表す」と同じ言い回しで書いてある。(2)を解答する際に、(1)と同じだとの思い込みで解いてしまわないようにしたい。もとにしている数は何か、わる数を【表】の中のどの数字にするか、など慌てないで正しく読み取ることが大事である。なお、割合に関する問いの文章には様々な表現があることを、過去の問題の事例を通して習得しておきたい。(2)ではさらに、「そのようになる理由」も説明することになっている。父の会話文にその理由が散りばめてあるので、適宜拾い上げて解答欄のわく内に収まるようにまとめることになる。

〔問題3〕は、(1)で現在の日本橋周辺の地図を見せ、江戸時代から現在までの町の変化の様子を年表のできごとを含めて説明する。(2)は、現在の日本橋周辺を観光客でにぎわうようにする取り組みを考える問題で、それによって何かを「発見」したり「再生」したりするようになることを説明する。課題の発見と解決の意欲を見ようとする問題である。(2)は配点が14点と高い。「課題発見力・解決力・創造力など」の資質・能力を期待する現実社会の要請は高くなっている。

2008年に開校して以来2014年まで自校作成してきた武蔵中は、社会科系の問題でもなかなか読み取りの難しい、しかし良問を出題してきた。検査Ⅱが共同作成になってからもその傾向は続いていたが2016年を最後に易化傾向にある。応募倍率が都立区立中高一貫校で最低倍率(4倍台・・・それでも私立受験に比べれば相当に高い倍率である)であり続けることの影響が、作問に反映するようになったのか?

[大問3]は共同作成問題で、花粉の観察と黄砂の観測に関する理科の説明問題。

〔問題1〕は、倍率の違う顕微鏡で観察した花粉の数から1㎠あたりの花粉の数を求め、求め方を説明する。

〔問題2〕〔問題3〕は、黄砂観測の結果についてまとめた資料から自然現象と気象の関連を考察させる問題である。例年〔問題3〕は科学的思考を問う傾向にあり、面倒な問題だったが今年は簡単である。

適性検査Ⅱは全体として、無理のない「適性検査らしい問題」である。都立の共同作成問題は、他の道府県に比べ、問いの文の読み取りが難しいのが例年の特徴であるが今年はそれほどではなかった。過去問練習をする際に注意したいことは、やみくもに全国の問題を多く解かせて慣れさせるトレーニングは必ずしも効果のある学習とは言えない。志望する都立校の問題を通して、俯瞰して捉える鳥の目(全体傾向の把握や要点・要旨の把握)と細部の表現(ちょっとした言葉の使い分けや資料の変化や違いなど)にこだわる虫の目の両方の力をじっくり育成しなければならない。


適性検査Ⅲ

検査Ⅲは独自問題で出題。算数3題、理科3題の構成で、開校以来だいたい7ページ程度の出題量だったが、今年は10ページとこれまでで最大のページ数となった。

[大問1]は、「運動会の来場門の設計とレンガの積み方」の問題。

〔問題3〕では、レンガの山の作り方を①か➁のどちらかを選ばせた上で、30段あるレンガの山の最下段の個数を求め、どのように求めたのか言葉と式を使って説明する。この出題形式は、武蔵では題材は違っても例年出題される形である。本問では、公差が2または4の等差数列で解くか、または1段ずつ調べて書き出して解答することもできる。

[大問2〕は、「生き物と環境」に関する問題。地球学を標榜する武蔵らしい出題である。〔問題2〕では、「鹿の頭数が、ガマズミの小枝の成長に直接影響すること」を調べる調査方法を考え、結果を予想して因果関係を把握する出題があった。自然界の鹿の頭数の増減と鹿の置かれた環境をどのように設定し、どのように調べるか、なかなかの難問である。この問題は、都立小石川が出題する同じ傾向の問題であり、結果を検証する実験を考えさせて緻密な科学的思考を問う。昨年は、理科の問題で塩水の電気分解の実験を出し、私立受験生にとっては慣れている楽な問題も一部にあったが、今年はそうではない。


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若泉 敏
スクールETC代表、森上教育研究所 公立中高一貫校特任研究員
福井県生まれ。私立学校教諭、中学受験専門大手進学塾講師を経て、82 年に「スクール ETC」を開塾。
OECD(経済協力開発機構)の PISA(生徒の学習到達度調査)と公立中高一貫校適性検査問題の関連性を初めて指摘。全国の公立一貫校適性検査問題を類型別に分類し、各メディアから注目を集める。適性検査問題分析の 第1人者として、講演や取材多数。

全国の公立中高一貫教育校と教育委員会を精力的に訪問取材しており、検査問題の分析を通して、公立中高一 貫校の運営や教育行政に改革提言も。
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