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適性検査問題を評価する

2018年2月19日

森上教育研究所 公立中高一貫 特任研究員  若泉 敏


白鷗は、2018年度から特別枠A(漢検・数検・英検取得者)を募集停止とし、海外帰国・在京外国人生徒枠を新たに設定し、伝統文化重視は変わらないものの国際社会で活躍するグローバル人材育成に大きく舵を切った。これに伴い1月25日に海外帰国・在京外国人生徒の選抜検査を作文及び面接で実施した。

また育てたい生徒像が変わることから、適性検査Ⅰに加え適性検査Ⅲを独自問題として新設することになった。このねらいは、大学入学者選抜改革を見据えつつ、国公立大学進学希望者の質を入学段階で見極める必要性と、理系進学可能な資質・能力を有する入学予定者を確保しようとすることにあると推察する。

3年目を迎える善本久子校長のもと、学校改革も意欲的な進展を見せる様子が伺えることから、他の一貫校の多くが受検者を減らす中、白鷗附属中学校は4年以前の受検倍率7倍に迫る受検者増加を実現した。


適性検査Ⅰ

2018年度検査Ⅰは、素材文が資料A 本川達雄著「生物多様性」(約1350字)と資料B 養老孟司著「『自』の壁」(約1700字)で、異なる2人の作者の文章を出すのは2年ぶりである。2つの文章の合計文字数は約3000字となった。

読解問題は2問、どちらも100字以内で説明する。〔問題2〕は、文章Bで筆者の言う「『マイナス』とは、どのような考え方か。また、その考え方についての筆者の意見はどのようなものか」を説明するのだが、「マイナスとは~である」という表現は文章中にない。それまでの記述を受けて「つまるところは」マイナスだと結論づけている。筆者が「マイナスです」と言っている「考え方」を示したうえで、「その考え方についての筆者の意見」を書く。筆者の考え方をまとめただけでは問いに答えたことにならない。「考え方」と「意見」を明確に区別して記述する必要がある。

〔問題3〕は、400~450字で書く課題条件作文。社会の中で「思考停止」してしまっている例を挙げ、それを変え多様性を大切にしていくためにはどうしたらよいか資料AとBの内容をふまえて考えを書く。

善本校長は、昨年から生徒たちにダイバーシティ(多様性)を繰り返し唱えている。社会の課題を自ら受け止め主体的な課題解決に向かう心構えを受検生にも求めている。


適性検査Ⅲ

2018年新たに受検生に課すことになった検査Ⅲ。試験は30分で両国や富士と同じ時間で実施。問題は2題、小問は合計8で、全問算数からの出題。概ね「適性検査問題として適切」なレベルである。

[大問1]は、外国通貨と両替する問題が2題、市松模様の図形に関する問題が3題。

〔問題1〕は日本円の3万円を2つの国の貨幣と両替する。

〔問題2〕は1カナダドルが84円の場合と87円の場合のどちらの場合に両替すればよいか、選んだ理由も具体的に説明する。「具体的に」というところがミソで、具体的にどんな数字を使うか。最小公倍数や2つの数の積を使う場合が一般的だが、ほかにも数字の大小に着目して極端な場合を例に出しながら説明することができる。〔問題3〕は、正四角錐の表面にある市松模様の色のついた部分の面積を求める。教科書活用型の問題。

これらに対して〔問題4〕「春樹さんの法則」というものを使って面積が9㎠の多角形を自分で書き、面積を求める式を書く問題と、〔問題5〕同じように「法則」を使って直方体の表面積を求め、求め方を説明する問題があり、なかなかユニークで工夫された良問になっている。(解説は別の機会に譲る。)

[大問2]は、カードゲームとその得点のルールに関する問題。

〔問題1〕と〔問題2〕はルールと「表」から適切に解答できる比較的容易な問題。

〔問題3〕は新しいルールでゲームを5回行った後にそのルールを書いた紙をなくした設定で、合計得点や会話の内容から2種類の得点ルールを考え、なぜそのようになるのか説明する問題。結果から逆算的思考でルールに迫ることになる。数字と「表」のカードの出方に着目すると見えてくる。


適性検査Ⅱ

適性検査Ⅱは、【資料から情報を読み取り、課題に対して思考・判断する力、論理的に考察・処理する力、的確に表現する力などをみる】問題で、教科的には大問1が算数、大問2が社会、大問3が理科を主題材にする。小問数はそれぞれ3題ずつで変わらない。ページ数は昨年に続き16ページで、2015年度の12ページから増加している。

検査Ⅱで大問3つすべてを共同作成問題で採用した学校は、白鷗、両国、立川国際、南多摩、大泉、富士の6校である。桜修館と三鷹は大問1(算数)を、小石川と武蔵は大問2(社会総合)をそれぞれ独自問題で出題した。

2018年度の検査Ⅱ[大問1]は、さいころを使った問題。

〔問題1〕は、立方体の展開図に1~5の目を書くのだが、簡単に考えて間違えた受検生が結構いたのではないか? 問いの文には「図1のさいころを立方体の展開図から作る」ことと「1から5までの目は図2のさいころの面のスケッチを用いる」とあり、2と3の目の傾き方と左右どちらの位置にどの目を置くかを判断しなければいけない。

〔問題3〕は、3枚の鏡を張り合わせてさいころを1個置いたときの見える目の数の合計を求める問題で、変わらない性質に気づけば説明も簡単に書ける。

[大問2]は、社会と算数の融合問題で、前回(1964年)の東京オリンピック開催時期を話題にして日本のくらしの変化を考える。

〔問題1〕は、東京タワーの約2倍の高さである東京スカイツリーが、見る場所によっては東京タワーと同じ高さに見えることを解明する問題。身近に存在するものが「相似の関係」である問題が昨年から全国的に散見できる。大学入学者選抜共通テストのサンプル問題とは異なるものの、出題者の視点は同じである。

〔問題2〕は、東海道新幹線に絡んで資料から分かることを書くのだが、昨年の社会科系の問題と異なり教科書活用の範囲である。

〔問題3〕は、消費支出に関して資料の数字を計算して割合を求め、グラフを作成した上で1965年~1990年までのくらしの変化の中でお金の使い方はどう変わったかを説明する。なお、帯グラフ作成の際に区切りの線を直線定規で引くことを条件にしている点に注意。

[大問3]は、花粉の観察と黄砂の観測に関する理科の説明問題。

〔問題1〕は、倍率の違う顕微鏡で観察した花粉の数から1㎠あたりの花粉の数を求め、求め方を説明する。

〔問題2〕〔問題3〕は、黄砂観測の結果についての資料から自然現象と気象の関連を考察させる問題で、例年最後の問題は科学的思考を問う傾向にあったが、今年は厳しさはなく簡単である。

検査問題Ⅱは例年同様、全体として無理のない「適性検査らしい問題」である。都立の共同作成問題は、他の道府県に比べ、問いの文の読み取りが難しいのが例年の特徴であるが今年はそれほどではなかった。ただ都立対策では、やみくもに全国の問題を多く解かせて慣れさせるトレーニングは必ずしも効果のある指導とは言えない。俯瞰して捉える鳥の目(全体傾向の把握や要点・要旨の把握)と細部の表現(ちょっとした言葉の使い分けや資料の変化や違いなど)にこだわる虫の目の両方の力をじっくり育成しなければならない。


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若泉 敏
スクールETC代表、森上教育研究所 公立中高一貫校特任研究員
福井県生まれ。私立学校教諭、中学受験専門大手進学塾講師を経て、82 年に「スクール ETC」を開塾。
OECD(経済協力開発機構)の PISA(生徒の学習到達度調査)と公立中高一貫校適性検査問題の関連性を初めて指摘。全国の公立一貫校適性検査問題を類型別に分類し、各メディアから注目を集める。適性検査問題分析の 第1人者として、講演や取材多数。

全国の公立中高一貫教育校と教育委員会を精力的に訪問取材しており、検査問題の分析を通して、公立中高一 貫校の運営や教育行政に改革提言も。
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